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サラリーマンの雑記

蜜蜂と遠雷/恩田陸 4人の若いピアニストを中心に描かれるピアノコンクールのお話

「気にはなってるけど読んでない」って人が、「読んで見ようかな」と思うような、絶妙な塩梅のネタバレを含む感想を書けたらと思います。

 

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恩田陸さんの作品です。

夜のピクニックで知ってるという人も多いかしらん。

直木賞、本屋大賞受賞を獲った人気作で、映画や漫画にまで展開されています。

 

昨日読み終えました。

面白かった。

記憶が鮮明なうちに自身の記録のためにも、あらすじや魅力をまとめます。

 

 

 

 

簡単なあらすじ

国際ピアノコンクールを舞台に描かれる、4人のピアニストのお話です。

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それぞれに色んな過去や想いがあり、物語は彼らやその関係者の視点から描かれていきます。

テーマは才能、努力、挫折、成長、とかそんな感じ。

苦悩や葛藤も多くあるものの、爽やかで読了感も素晴らしい青春小説。

 

登場人物

メイン4人を簡単に紹介します。

 

風間塵

16歳の天才少年。

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履歴書にある彼のデータはほぼ真っ白。演奏歴や受賞歴なし。

ただ一文だけ、生前ピアノ界のゴッド的存在だった人物に師事していたことが書かれている。

ピアノ界なら誰でも憧れるような(パパさん界のビッグダディのような)、今は亡きゴッド。

審査員は物語の最初から彼をマークします。あのゴッドがなんの実績もないこんなガキに?亡くなるまで?自ら出向いてまで教えていた?

この設定超ええ。

演奏は型破りで野性的。

人の心を動かす演奏は、それ故に支持する人、拒絶する人を生んでしまう問題児。

審査員や調律師、コンテスタントや観客全ての登場人物から、計りようのない天才と認識される。

 

栄伝亜夜

元天才少女の20歳。

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えいでんあやって読みます。

13歳の頃に母親を亡くし、以降表舞台から姿を消していたが、なんやかんやあって不本意ながらコンクールに出場する。

挫折と成長がかなり色濃く書かれていて、物語の核に近い人物。

 

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

才色兼備、19歳のパーフェクトヒューマン。

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紛れもない天才でありながら、手の届かない本物の天才である塵、亜夜を仰ぎ見る視点を持っているところが魅力的。

以上。

 

高島明石

28歳の妻子持ちのサラリーマン。

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音楽に全てを捧げている人には演れない、「生活者としての音楽がある」という信念を持つ、ほぼ最年長のコンテスタント。

仕事をしながら生活を切り詰めて時間を捻出して積み重ねて、若さと才能を併せ持つバケモン揃いのコンクールに真っ向から挑んでいく。

苦悩や葛藤が多く描かれ、4人の中では凡人ポジ(十分非凡なんだけど)。

設定や境遇がとにかく魅力的で、一番好きです。

 

僕が感じたこの作品の魅力

個人的に「ここがいい」と感じたポイントをあげます。

もちろん核になるようなネタバレはしません。

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演奏シーンが詩的で芸術的

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(243Pより)

「指をものすごい速さで動かすものの、黒鍵に指が引っかかることもなく」

 

(510Pより)

「そして、彼は思いっきり低い音から高い音の方に手を滑らせた(これをグリッサンドということは言うまでもない)。明石にはきっかり23時に爪を切る習慣がある(今の妻と交際して間もないころ、「爪伸びた手でガシガシされるとほんまに痛いねん」と泣かれたことがきっかけである)。せやから、鍵盤に爪がガッとなって血が出るようなことはないのであった。」

 

とかそういう洒落臭い表現は一切なし。当たり前だけど。

演奏シーンは、基本的に「演奏者の奏でる音が生み出す心象風景の描写」なんです。

おしゃれでしょう。

もちろんところどころちょっとした専門用語や、音楽家の名前などが出てきます。

そういったところは過去にピアノやってた人は更に楽しめると思います。

 

僕はピアノの経験がありませんが、経験がないからこそ、そこに一切の具体性を持たない抽象的な「すごい演奏」を頭に流すことが出来たので、音楽をよく知らない立場ならではの楽しみもあると感じました。

 

ああでも音楽ものの弊害?として、音楽聴きながら読めませんでした。

演奏シーンに差し掛かったのに耳元で「話せなくてヒィ~ 会えなくてもヒィイ」とか流れてきたときはAirPodsぶん投げましたね。線路に。

ふざけてんじゃねえぞ。 

 

高島明石の演奏シーンが泣ける

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物語の序盤、明石が演奏するシーン。

それまでの苦悩や喜びがフラッシュバックして・・・というくだりがあります。

ぐっと来ました。

ここで一気に引き込まれ、恥ずかしながら、朝の総武線で大声出して泣いてしまいました(泣き声が大きすぎて「異音」により停車させてしまう程でした。あの日遅延させてしまったことで迷惑を被った方がいらっしゃいましたら、この場を借りてお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。)。

僕自身29歳のサラリーマンで妻子持ちで凡人で、気持ちを重ねられる部分が多くありました。

とにかく魅力的なキャラクターです。

「あぁ、こんな序盤で既にこんな面白いなら、もう裏切られること無いな」と、残り8割残した紙の厚みにニヤニヤせずにはいられませんでした。

 

 

高島明石が亜夜と言葉を交わすシーンが泣ける

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ネタバレなしには良さを書けないシーンなので、どう良いのかは書きません。

とにかくよかった。

 

高島明石に審査員から電話が来るシーンが泣ける

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ネタバレなしには良さを書けないシーンなので、どう良いのかは書きません。

とにかくよかった。

 

高島明石の音楽家として「最後の挑戦」が「全ての始まり」に変わる過程が泣ける

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ネタバレなしには良さを書けないシーンなので、どう良いのかは書きません。

とにかくよかった。

 

高島明石がすごくいい

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あがいて苦悩して葛藤して、そんな中誰にも劣らない努力をして。

そんな彼が報われるいくつかのシーンは、心にきます。

一番好きですほんまに。

 

最後に

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面白い面白いと言われている中、本当か~?という気持ちで読んでなお面白かったので、すごく面白いと思います。

面白いよ。面白そうだから読もうかなって気が少しでもある人は、面白いので読んでみることをおすすめします。

みんなが面白いって言うものって、斜に構えても結局面白いんだよね。

面白いよ~。

おわり。

 

 

 

 

 

余談ですが、

 

僕はこの作品を発売後間もなく手にしました。

もともと恩田陸が好きで、文庫本は多くを持っていますが、単行本を買ったのは初めてです(キングボンビーなので)。

その理由は魅力的なカバー。

喉から出た手でお会計を済ませ、両足で走って帰って、部屋に置いてみたんです。

そしたらもう、ラックに置かれてる様がめちゃくちゃしっくりきてしまい、そのままインテリアとしてずーっと寝かせていました。

そのせいで、映画化されていたことを知ってから読み出すという。

買ったあの日に読み始めてたら。

誰よりも先に「面白い」と言いたかった。

それだけが後悔です。

魅力的過ぎるカバーもどうかと思いましたね。

おわり。

 

ついでに、

恩田陸の作品と並べるのは本当におこがましいですが、

僕が一生懸命書いた短編小説も、よろしくおねがいします。
www.mugino.com