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サラリーマンの雑記

【短編小説】3度腹を斬り、その後2年間勃起し続けた少年の話

少年はこれまでに三度、自殺未遂をしている。物心ついた時には両親はいなかった。代りに、作り物のように不自然な太り方をしていて、あまり喋らないおじいちゃんに育てられた。働く姿を見たことは無いが、お金はいっぱいあった。

少年は学校で度々虐められた。殴られた。無視された。持ち物全てを壊された。毎日が苦痛だった。家に帰ると待っているのは、自分に無関心で喋らないおじいちゃん。

親のもとに帰る同級生が羨ましかった。自分をひどい目に合わせる悪魔のようなアイツ、アイツ、アイツ、アイツ、アイツらみんなに、帰りを待つ親がいた。

少年には誰もいなかった。ふと、自分がいなくてもいい存在なんだと結論付けた。そしてまだ暑さの残る雨の日の夜、少年は自分の腹を刺した。

 

目を開けると、知らない天井と知らない人が目に入った。病院だった。少年は失敗したことを悟った。泣きたかったが、泣けなかった。悔しかった。助かりたくなんてなかった。自分の世話を焼く看護師が憎かった。目を覚ました3日後の夕方におじいちゃんが来た。「ごめんなさい」。なんとなく謝った。申し訳ないと思っていた。意外な言葉が返ってきた。「欲しいものはなんでも与える。面倒なことは二度とするな」。おじいちゃんは籠に入ったフルーツを置いてすぐに帰った。りんごを手に取って、そのままかじりついた。看護師が来た。剥いてくれるらしい。

あの人、欲しいものは何でも与える、だってさ。少年はおかしくてたまらなかった。慣れた手つきでりんごの皮を剥く看護師が握る果物ナイフを見ながら、今度は失敗しないと誓った。

 

その後、二度失敗した。

 

少年は諦めた。自分はどういう理由かはわからないが、どうやら苦しみを味わい続けなくてはならない存在なのだと悟った。神様は、死ぬことですら許してくれないのだ。そしてある日、少年は、いろんな女の子のお尻を触ろうと思った。そう決めたその瞬間、少年は生まれて初めて勃起した。

 

そして2年後、少年は東京駅八重洲口前のコインロッカーから変わり果てた姿で見つかることになるのだが、司法解剖の結果、驚くべきことに、初めて勃起してから命を落とすまでの2年間、常に勃起していたことが明らかになる。